タイの仏教ではヒンドゥー教におけるプラ・イン(インドラ)、プラ・ナーラーイ(ヴィシュヌ)などの神々を神話の産物として位置づけ、信仰の対象にしていない。これをアテーワニヨム(アは否定の接頭語、テーワは「神」、ニヨムは「主義」)という。タイの寺院では本尊には必ず仏像を配置しヒンドゥーの神々はあくまで装飾の一部である。アテーワニヨムはタイの仏教におけるサンガの基本的な思想として受け入れられてきた。
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また庶民の仏教観念としてタムブンというものがある。タムブンとは徳を積む行為のことである。タムブンと言う言葉は広義には人や動物を助けたりする行為が含まれるが、狭義には寺院や僧への寄付のことになる。タムブンの観念は輪廻転生の思想が影響している。生まれ変わることを前提としているタイの仏教思想においては低いとされている身分や動物、地獄に生まれ変わることはブン(徳)が足りないからだと説明され、現在金持ちなのは前世のブンが多いからと説明される。この思想は特にタイに仏教が伝わる以前からあった思想であるが、前述したスコータイ王朝のリタイ王が地獄の描写を具体的に描き出した著作、『三界論』で強化された。三界論はモンクット王のタンマユットニカーイによる批判が加えられるまで主要教典として採用されていたことがこれを強化させた。三界論自体は現在では否定されているものの、タムブンの行為自体はサンガの財源であるため現在に至るまで否定されていない。
ブンは興味深いことに、タイにおいては他人に転送可能であると考えられている。たとえば、寄付する際、領収書に親や恋人の名前を書くことで自分のブンが他人に転送されると信じられている。またこの転送は死者にも可能と考えられている。昔話などにも息子にブンがあったことで、閻魔から救出されたとする話もある。このようなブンの観念は仏教徒のタイ人ほとんどが人生に一度出家を行う理由の一つとされる。